ラダックを歩くということ shamvalleyトレッキング③

昨日目張りした窓は完全に冷気を妨げてくれたと思いきや、朝起きてみると他にもたくさん窓の隙間がある事が分かった。どうりで朝寒いわけだ。

しかし起きてこの景色が見れるならそれも悪くないかもしれない。
朝食を食べた後、後髪を引かれる思いで家を出発。
今日も少しゆっくり目の8:30からの歩き始めとなった。


初めはジープロードを歩いていると、一気に景色が広がった。
見渡す限り草原になり、荒々しい岩山と背後には雪山が聳え立つ光景で、ラダックのトレイルといえばこんなところ!と想像していた風景が目の前に広がる。


一つ目の峠までは緩やかな登りで気分よく歩けた。天気も良く、すこぶる気持ち良い道で、このshamvalleyトレッキングのハイライトとも言える景色。


問題はその後である。
Hemis ShukpachanからTingmosgangまでは二つの峠を越えるのだが、一つ目の峠から二つ目の峠まではトレイルを歩くか、一般車道を歩くか選ぶことができる。
トレイルはなぜか谷底まで下り,すぐに登るという脳筋ルートになっている一方、車道は高度を保ったままトラバースしていき、アップダウンはほぼ0。

せっかくだからトレイルを歩こうかという気持ちもあったのだが、この日はタクシーとの待ち合わせ時間もあり、僕達は車道を歩いた。
見てくださいこのザンスカール山脈を眺めながら歩く素晴らしい車道を。



これは敗北ではなく、紛れもなく勝利の景色です。

ということで二つ目の峠までもあっという間にすぎ、12:00手前には到着。ここからはほぼ下りのみなのでかなり順調。


谷底をトレースするような非常に歩きやすいトレイルに沿って行くと、Ang村に到着。

道端でランチを食べる。この時期はあまり商店も開いていないのだが、運良くhemis shupachan村でジュースとレイズのポテチを買えたので、豪華?なランチとなった。

ここから先は車道オンリーとなるため、特に迷いもせず進む事ができた。そして目の前にそびえる本日のゴール、tingmosgangのゴンパ(寺)が見えて来た。

200m上に聳え立つゴンパ。
最後の最後でかなりしんどいのだけど、トレイルの最後を締めくくると思い、無心で登る。
頂上からはこれまでの道筋が見え、更には華麗な釈迦像にも出迎えてもらい、無事ゴール。

タクシーには14:30にゴンパ集合、と話しており、到着は14:10だったのちょうど良かった。

と、ここまでは良かったのだが、14:30を過ぎてもタクシーの姿が見えない。
まあここはインドだしな、と余裕の表情で30分ほど待ったが一向に来る様子がないので、ドライバーに電話をかけたのだが通じない。
今回はツアーエージェントを通して予約していたので、エージェントにも連絡したところ、エージェントもドライバーに電話が通じないようだった。果たしてドライバーはどこに行ったのだろうか。
流石に焦りが生じてきてgoogleに『インド タクシー 来ない』と調べ始めたところ、遠くから見覚えのあるバンが。
どうやら僕たちはゴンパの頂上を集合地点だと思い込んでいたが、ドライバーはゴンパの麓を集合地点だと思っていたらしい。
麓は電波が入らないので、村人に話を聞きながら、上に向かった僕達の情報を得て、車で上がって来てくれたらしい。当たり前のことだが、集合地点はちゃんと地図上で決めておくべきだった。

そんなプチトラブルがあったが、2時間後にはレーに到着。飛行機で着いたばかりの時は田舎町のように感じたが、三日間山中で過ごすと大都会のように感じてしまう。

夜ご飯には山中では食べられなかった肉料理を出してくれるレストランへ。ほとんど菜食のチベット食事も悪くないのだが、久々に噛み締める肉はとてつもなく美味かった。
ラダックを歩くということ Shamvalleyトレッキング②

窓を開けると日光に照らされる雪山が出迎えてくれた。朝の5時半だが、あまりの光景に目が覚めてしまう。

朝ごはんを食べたあと、9:00にホテルを出発。
ランチを持たせてくれるのだけど、実は朝ごはんの残りのチャパティ+お菓子という内容なので、朝ご飯を大食いしてしまうとその分ランチが減る。
そうとは知らずに爆食いして寂しいランチになってしまったのを可哀想に思ってか、とうもろこしの干したものみたいなのを大量にもらった。有難い!

シャムバレートラックのうち、2日目のyamtangからhemis shupachanまではmaps.meでのルートが載っていない。そのためGoogle mapの航空写真をスクリーンショットに撮り、道を探しながら歩いていく。こんなアナログな旅行は久々だ。

村人に話を聞くと、yamtangの街を出てすぐに谷に降りてジープロードに繋がる橋を渡る必要があるようだった。そして見つけたのはこれだ。

絶対間違っている。なぜならジープロードにも繋がっていないしこれは橋ではないからだ。しかし地元民にも確認したらこれで合ってると言われる。間違っていると思いながらも、他に選択肢がない僕たちは進むしかない。
そうこうしているとこの後完全に踏み跡が無くなり、道は藪の中に消えてしまった。

なんとかパワープレイで崖を登り道路に出ると、遠くには橋が。
どうやら、僕達が探していたジープロードに繋がる橋は完全に舗装されており、Google Mapの航空写真と異なっていたのだ。


なんとか間違いに気づき、谷に向かう方向へ。
一度谷に入ってさえしまえばそこから先は迷うことは少ない。ただひたすら,上を目指して登るのみ。

この日はかなり向かい風が強かった為、道中の良い岩場で昼ごはん。なけなしの昼ごはんだが、こんな風景の中で食べるものはなんだって最高に思えてくる。

そこから頂上まではすぐ。
完全に景色ドーピングで息を切らしながら登っていく。


想像通り、頂上は爆風で記念写真を撮ったらすぐ下山。この時は晴れていたのだが、次第に天気は崩れて雪までちらつくように。

急いで下山にかかる。
頂上からはhemis shepauhanの街は見えているが、ここラダックではスケールが大きい為、意外と時間がかかる。実際に街までは1時間ほどかかった。

とはいえ、13時半過ぎには到着し、余裕があったのでゴンパを見学。

山々を眺めるように釈迦像が建てられている。
そして今日の宿を取ろうと街を練り歩き始めたのだが…今日のトレイルで一番大変だったのは、まさかの宿探しだった。

というのも、5月初旬はまだトレイルが開通して間もない閑散期で、開いていないホテルがほとんど。
しかも、村人もどこのホテルが開いているかを把握していない為、尋ねてみてもたらい回しにされるだけで一向に見つからない。隣人がホームステイをしているかも把握していないのだ。田舎といえば隣人の繋がりが強いものだと思っていたが、そうでもないらしい。
気づけば時間は15時半になり、日が傾きつつある。
かなり焦りながら村内を三往復目に入ろうとした時、なんとかホームステイをしているおばあちゃんに出会うことができた。本当に良かった。
そしてこのおばあちゃんはスリッパに重い荷物を背負っているにも関わらず、かなり歩くのが早い。
なんとか見つけたオーナーからはぐれないよう、息も絶え絶えしながら着いていく。

家にはWifi無し、シャワー無しの設備だが,この際屋根の下で寝れるだけ有難い。
夜ご飯はやはり定番のラダック料理、チュタキである。暖かさが心身に染み渡る。

部屋の窓の一部がないのもご愛嬌だが、流石にこれは寒すぎるので丁重に塞いでおいた。これで今日の夜も安泰だ。きっとゆっくり寝れるでしょう。

ラダックを歩くということ shamvalleyトレッキング①

普段あまり運動をしない妻と、一緒に歩ける程度の強度と、景色の良さ、あとは面白さを兼ね揃えたトレイルを探していたところ、インド北部のヒマラヤ地帯であるラダックに、Baby trekと言われる比較的難易度の低いトレイルがあることを発見した。
正直インドと言えば暑い、煩い、騒がしい、人が多い、腹を壊す、ぼったくられる等の全く良い印象がないのだが(故に行ったことない)…
ラダックはチベット文化圏であり、仏教とイスラム教が8割を占め、食事やルール、服装も違うようだ。
ここであれば行ってみたいと思い、飛行機のチケットとビザを申し込み、えいやで有休休暇もぶち込んだ。出発10日前のことである。


山岳都市レーに到着すると透き通るような青い空に出迎えられた。少し喋ると頭が痛いのは、ここが標高3500mの高山都市だからであって、機内で飲み過ぎだからではない…と思いたい。
レーの街では2日間の高度順応と準備期間を経て、朝8:30にホテルからタクシーで出発。

途中でILP(inner line permission)のチェックがあった。これから本当に軍事防衛線に入るんだ…と思ったが、景色が良くなるばかりでとくに威圧感は感じない。1時間半ほどでLikirトレイルヘッドに到着し、歩き始めた。

Likirの街を抜けると一気に景色が変わる。
赤い岩山に取り囲まれ、その背後には雪をたたえた5000〜6000m峰達が鎮座している。

景色の良さに思わず足が早まってしまい、息が切れる。そう、ここは既に3600mを超えており、富士山の8〜9号目に匹敵する。
はやる気持ちを抑えながら、まずは一つ目の峠Pode laに到着。

一度小休憩を挟み,再度谷底へ降りていく。
道は迷いにくいのだが、踏み跡がいくつかあるのでmaps.meを見ながらルートファインディングをした。

ちなみに、迷わないコツとして、道中に大量に落ちている牛の糞を頼りにしていた。どうやらここは家畜なのか野生なのかは分からないが、牛やロバも通る道らしく、正しい道には新しいホカホカの糞が落ちている。
その糞を道標にしながら進めば迷わないのだが、しまいには周囲の山々には目もくれず、地面を眺めながら『うんこあった!うんこ!』と喜びながら叫ぶ始末である。

Baby trekと言われるくらい簡単と思っていたが、意外とアップダウンがありかなり疲れる。
なにがBabyだよ、と思っていたが、道中『うんこ!うんこ!』と叫びながら歩くのは完全に頭がBabyである。いや、小学生男子か?
…そんなことをしていると、二つ目の峠、Charatse Laに到着。

標高3726mで、1日目のピークになる。ひとまずはこれ以上登らなくて良いと思うと一安心。だったのだが…

なんとyangthagの村は小高い丘の上にあるため、登り返しが必要。

慣れない高度にゼイゼイ言いながら村には15時頃到着。遠くに見える名もなき山脈が美しい。

村の中は閑散としており人の気配をあまり感じなかったが、老人方の溜まり場を見つけ、そのうちの1人がホームステイさせてくれることに。
ここら辺では宿ではなく、基本ホームステイ、という形を取る。朝晩のご飯と宿泊、そして昼ご飯を持たせてくれる。少し古い建物だったが小さい猫が二匹もいたのでここに決めた。

ホットシャワーはあるのか、と聞くと一応ある、みたいな釈然としない回答だったので詳しく聞くと、なんとお湯をバケツに溜めてシャワールームに持って行き、柄杓で浴びる式だった。
シャワーの設備はあったので、夏のハイシーズンは稼働しているのかもしれない。

バケツのお湯はそれなりに熱いため、快適に浴びることはできた…はずなのだが、2人で半分こしようと約束したバケツのお湯は、妻が入った後には柄杓5杯分しか残されていなかった。(泣)

夜はチュタキという手製のパスタとじゃがいも、カリフラワーをカレー風味で煮込んだラダック料理を頂いた。
ホームステイというだけあり、家族全員とご飯を食べながら話をしていたら、オーナーが軍隊卒業時にもらったというワインを少し頂いた。

とても美味しかったのだが、疲労のためか凄まじい眠気に襲われ、ベッドにダイブ。朧げな記憶だが、部屋の前で見た星が物凄く綺麗だった。
サラリーマンの為のアンナプルナサーキット

サラリーマンには時間がない。
しかし時間が許す限り、力の限り遊びたい。
一週間程度なら会社の休みが取れ、家族のマネジメントが可能で、そしてそれなりに刺激的なサイクリングを求めている……
そんなサラリーマンサイクリストの為の最短、最速9日で行ける、ネパールの山岳サイクリング、アンナプルナサーキットの方法を記載します。
そもそもアンナプルナサーキットとはなんぞや?という方は僕の当時のブログをぜひ読んで欲しい。毎日の記録を、赤裸々に残しています。
https://remaker314.hatenablog.com/entry/2025/04/15/234912
提案スケジュール
まず、以下が僕の考える最速最短、かつ現実的なアンナプルナサーキット自転車周回スケジュールです。

工程
土 移動(日本→カトマンズ)
日 ジープチャーター(カトマンズ→ベシサハール)&許可証取得(ベシサハール)
月 ツーリング(ベシサハール→ティマン 46km 2500mUP)
火 ツーリング(ティマン→マナン 44km 1300mUP)
水 高度順応(マナン) 予備日
木 ツーリング(マナン→トロンハイキャンプ 20km 1500mUP)
金 ツーリング(トロンハイキャンプ→ムクティナート 17km 500mUP)
土 ジープチャーター(ムクティナート→ポカラ)
日 移動(ポカラ→カトマンズ→日本)
ポイントは以下です。
高度順応は慎重かつ大胆に。
強い人であればツーリング工程はもっと短縮できますが、高度順応を考えるとこのくらいの日程で納めていた方が吉と思います。
予備日一日あるので、マナンで高度順応or余裕があれば予定の前倒しが可能です。
(僕達は釣りも目的にしていたので、+1日をつけて10日間の行程にしました。)
一般的に、高度順応が必要なアルパイン登山での推奨だと、1日に300mずつ標高を上げていくことなので、それなりに身体に負担をかけることになります。高山病の薬(ダイアモックス)は準備しておいて、しっかり予防しつつ、体調と相談しながら進めてください。ベシサハールからマナンまでと、ムクティナート以降はジープでの撤退が可能ですので、引き際は意識しながら頑張って下さい。

都市間の移動はジープチャーター
カトマンズ-ベシサハールやムクティナート-ポカラはバスで行くのが最安ですが、バスは前日に予約が基本で、移動に丸一日半かかることが多いようです。(他ブログ、現地情報参考)
現地、もしくは日本で事前にチャーターの予約をしておけばスムーズに移動できるほか、バスよりも移動が早いので日程の短縮が可能です。
あと、意外にも時間ぴったりにきてくれました。(朝5:15の予約をしていたら、5時には来てくれていました。)

僕の場合、カトマンズに到着は夜だったので、翌日のカトマンズ-ベシサハールのジープは以下サイトで、日本で予約しておきました。
ムクティナートからポカラ間もジープチャーター可能です。この辺りに沢山車が止まっていますので、いくらでも交渉可能だと思います。

ちゃんと話しておかないとチャーターではなく乗合ということになりますのでご注意を。僕達は乗れなくなり、泣く泣く雨の中走ることに。
ちなみにどちらもめっちゃ高いけど、時間には変えられません。時は金なり。サラリーマンよ、金には屈するな。何のために働いているのか思い出せ!
ACAPはベシサハールで取得
他ブログだとバスの予約と共にカトマンズかポカラで取得される方が多いですが、これも時間を浪費する要因です。ベシサハールから少し進んだ先に事務所があり取得できます。

https://maps.app.goo.gl/peaQ54cDgD7DL16y6?g_st=ic
証明写真を持っていくとスムーズですが、無くても写真撮影してもらえます。
Google mapによると、7:30-18:30で毎日やっているみたい(ほんとか?)
ここで取得できなくても次のチェックポイントでお金を積めば取得可能と聞いたので、そこまで気にしなくてもOKと思います。
ポカラ-カトマンズ間の飛行機
ポカラ空港からカトマンズまでは飛行機で1時間ほどで着きます。飛行機輪行も可能なので、時間がない我々にとっては必須手段になります。

ダンボールは現地調達可能なので、あとはガムテープさえあれば無問題です。
一つ気をつけたいのは、ポカラ空港の発着時間はしっちゃかめっちゃかであること。
僕達は15:30の飛行機を予約していたのだけど、到着した時には2時間の遅れが生じていました。しかし、2つ前の便の空きに入れてもらい、結果的には15時半に出発できました。

少し行き当たりばったりの計画になるので、カトマンズ-日本の移動日とは組み合わせない方がベストです。もし同じ日にポカラ-カトマンズの飛行機が入るなら、十分な余裕を持たせるべきと思います。
とにかく軽量化
9日間で獲得標高8000m越えの山岳サイクリングになる為、荷物の量=身体へのダイレクトアタックとなりえます。重量を削れるだけ削ることが、今回の旅での人事を尽くすことです。以下は参考までに、私の行った軽量化を記載します。

・寝袋:無しでOKでした。アンナプルナサーキット間で野宿をすることはほぼないと思うので、ダウンを着込む&宿の布団で十分対応可能です。最も気温が下がるのはトロンハイキャンプの夜ですが、200rpで追加ブランケット貸し出してもらえるので寒くありませんでした。どうしても寒ければ、MANANGの街で装備はいくらでも買い足せます。

・水:浄水器で常に補充可能に。道中、水は多く流れている&水道水をレストランからもらえるので、浄水器があれば水に困ることはありませんでした。(終日、750mlボトル一本で対応しました)
直接流れている水を飲んでも良いけど、お腹を下して体力を削るほど無駄な事はありません。浄水器は何でも良いですが、ソーヤーミニがコンパクトかつ軽量でおすすめです。いつまで重い水を持ち歩いてるの?

・服:意外と嵩張るのが服です。服も少なければ少ないほどよいです。僕は軽量化のため、レイン上下、ダウン上下、中綿ミドラー上下、インナー上下を1セットずつ、そしてパンツ2枚のみで、就寝から走行まで全てを通しました。レイヤリングで調整して、最も寒いトロンパス越えの朝(-15℃)は全て着込んで対応可でした。乾季はかなり空気が乾いているので、化繊のウエアであれば、しっかり脱水すれば夜に干して朝には乾いていました。
最後に
本当は、時間の許す限り自分のペースで回るのが一番ベストです。それができる人にはこのブログは何も参考にならないでしょう。
しかし、日々の業務をこなし、家族とも過ごす、そんな忙しい中でのサイクリングにも美しさは存在します。寧ろ、その方が価値が上がり、達成感も大きいかもしれません。
とはいえ、普段の過ごし方がどうであれ、5000m級の海外山岳サイクリングであることに変わりはありません。折角行くのだから、仕事と同じく準備はしっかりと。いや寧ろ、仕事よりも真面目に準備しましょう。
あなたの旅に実りが多からんことを。

【ネパール山岳自転車釣り旅】⑨魚の行方

Kushma - Pokhara - Kathomanth

今回の旅の目的の一つ、アンナプルナサーキット走行は無事叶った。もう一つの目的は魚を釣ることだ。
現地を自転車で走りながら現地で魚を釣る。
自転車では同じ道を走ることはあまり無い。
つまり、もし魚を釣ることができたなら、それは魚との一期一会であり、一筆書きの旅の中でとても印象に残る出来事になる。
今回も、勿論それを狙っていたのだが…
ここまでの道中、単純に自転車ルートとしての強度が高すぎて釣りの時間がほとんど取れなかった。
そうこうしているうちに、気づけば最終日である。

幸い、昨日雨の中頑張って走ったことにより、少し時間に余裕ができた。
朝5時起きでホテルを出発し、地図で目星をつけていたポイントへ向かう。朝日に照らされるマチャプチャレが神々しい。

ちなみに、ネパール河川での釣りをするためのルールやライセンス等は、なかなかインターネットで調べても出てこない。
本当は釣具屋やガイドに聞くのがベストだが、今回は行き合うことがなかったため現地の人に聞きつつ釣りができるポイントを探すことにした。

一つ目のポイントはダム下で水が良い感じに流れているところ。
魚影は見えないが、雰囲気はとても良い。ここであればいる可能性が高い、と思いつつ準備を進めていたのだが。
地元の少年2人がおもむろに現れ、僕達の様子を見るや否や、ルアーフィッシングはネパールで禁止されている、と言い始めたのだ。
実際に、ポカラ近郊ではルアーフィッシングは行われている。
もしかするとこの川が禁止なのか、ルールが変わったのか聞きたいというと、別の家に案内された。
そこではおじさんとおばさんが現れ、以下のことを説明された。
・ルアーフィッシングは禁止である。
・餌釣りはOK。
・ネパールの川は全部同じルールである。
僕としては、釣れるなら餌釣りでも良い。
但し、餌釣りのセットが問題で、錘となる石ころが2000円、餌が1000円と言うのだ。
…怪しい。
とても怪しい。
ネパールで餌釣りしかできないと言うのも聞いたことないし、他の地域の人もそんなことは言っていなかった。
しかも3000円というのは、観光客にとっては払えるかもしれないが、地元の人にとってはかなりの大金だろう。
地元の人が釣りをしているのを見た事があるが、そんな大金を払っているとは思えない。
極め付けは、話し方だ。
少年はおじさんとおばさんにニヤニヤしながら耳打ちをし、おじさんとおばさんは英語を話せないふりをして売りつけようとしてくる。

もうええでしょう!
色々と質問をしても、3000円が1セットだ、しか言わなくなったので、無視をして上流に進み、そこで別の人に聞くことにした。
ちょうどアンナプルナサーキットのACAチェックポイントがあったので、事務員に聞いてみると『何も問題ない。川のどこでもOKだよ』と言う反応。
ルアーもOKだし、魚もいるという。
さっきの彼らの言い分はなんだったのか。
都合が良いかもしれないが、ACAチェックポイントの人の方がルールには詳しく、正当であると判断し、こちらを信じることにした。

川の水量は多く、少し濁りがある。
季節は春なので、雪解け水が混じっているのだろう。
上流に上がると、少しマシになったので釣りを開始した。

しかしなんだろう、雰囲気は良いのだが、魚影が全くない。
チェイスもなければライズもない。
魚の存在を感じれない。
ネパールの魚はどこに行ってしまったのだろうか?
結局、魚の姿すら見えず、時間が来てしまったのでポカラに向かうことにした。完全敗北である。

ポカラに西側から入る際には峠を一つ越す必要がある。
10kmかけて600mほど登る、かなり長丁場の登りをゆっくりと確実にこなしていくと、次第に景色が開け、眼科にポカラの街が見え始めた。

そこからはひたすらダウンヒル。
マチャプチャレやアンナプルナ峰を眺めながらの舗装路の下りはかなり気持ち良い。
正直、僕達を(恐らく)騙そうとして時間を無駄に使わせた少年たちに結構イラついていたのだけど、このダウンヒルでそんな気持ちは吹っ飛んだ。ありがとう下り坂。


ポカラ近郊まではすぐにたどり着いた。
ポカラの街は美しい、とよく現地の人から聞いていたので期待していたのだが、僕はあまりそう思わなかった。

理由は交通である。
ボッコボコの道、縦横無尽に走り回るバイクとタクシー、鳴り響くクラクション…
そこは一般的なアジアの街と何一つ変わらない、喧騒な街並みであった。

バイクとのマリオカートを楽しみつつ、早々に空港へ。
着いてから気づいたが、後輪がパンクしていた。それほど、街中のマリオカートは白熱していたということだろう。

ポカラ空港からはブッダエアーでカトマンズまで一度飛ぶ。
あまり情報が無かったが、ブッダエアーに自転車は輪行バックで超過料金なく乗せることができた。
ブッダエアーはよく遅延すると聞いていたが、飛行機も早い便に変えてもらうことができ、結果的に時間通りに到着することができた。
カトマンズに戻った理由は、一日目の宿に預けておいた段ボールを回収するため。
忘れて捨てられてないか心配だったが、しっかり残しておいてくれたおかげで無事梱包できた。

そして最後の夕食はやはりダルバート。
きつい時、疲労が溜まった時、なぜか食べたくなるのはダルバートだった。最後ということもあり、盛大に三度ほどおかわりし、眠りに着いた。
これで、今回の旅は終了。
この後、火曜日の朝に日本に到着し、そのまま僕は出社した。
遊んで帰って、すぐ仕事があるということはサラリーマンの特権だと思う。
本当に幸せなことだ。
今回の旅は、特に時間の無さと体力の減衰を感じた。
7年前、大学院生の時に僕は休学して9ヶ月間自転車で旅をした。
その時は時間も体力も有り余っていた。
やろうと思ったことを、すぐ実行に起こすことができた。
今は状況が違う。
僕は結婚して家族がいるし、仕事もある。
その中で日々トレーニングをし、時間を見つけ、休みを作るのは中々難しい問題ではある。しかし、そんな困難を乗り越えて集まる仲間がいる事は、とても勇気づけられた。
今後とも、面白いことを見つけ、行動し続けたい。
このブログが、同じような思いの人の一助になっていれば嬉しい。
それでは、また次の旅で会いましょう。
【ネパール山岳自転車釣り旅】⑧旅の醍醐味

Muktinath - Kushma

昨日頼んだジープツアーは、7人乗りのジープを僕たち4人で貸切り、中に自転車を積む作戦立った。
宿のおばちゃんには貸切にして自転車を中に積みたい旨を伝えて、おばちゃんも理解した様子だったのだが…

なんと朝来たジープには何故か4人すでに乗っていた。もちろん、自転車は当然中に入らず、上に積むしかないと言い出した。
ネパールの道は本当に路面状況が悪く、自転車一台であればジープの上に積んでも緩衝材さえちゃんとすれば問題ないと思うが、自転車4台は論外だ。確実にぶっ壊れる。
とはいえ、ホテルのおばちゃんも頭を抱えて困った顔をしている。聞いてみると、昨日の時点では貸切状態だったそうだ。その時点で貸切を確定してくれていればよかったのだけど、うまくいかなかったのだろう。
実はこのおばちゃんには昨日から色々とお世話になっており、正直あまり責めたくはない…
苦渋の決断ではあるが、キャンセル料を払ってキャンセルすることにした。
一番喜んでいたのは、中に座っていた4人組のヨーロピアンハイカー達である。僕たちがキャンセルと分かると嬉々として席を移動し、広々と座り始めた。そりゃそうか。

ということで、走らなくてはならなくなった。
もともとここを飛ばすのは、天気が悪い予報だったことと、明日には200km先のポカラに着いている必要があったからだ。
安全マージンを取ろうとしたのだけど、それが取れないならば自分で走れば良い。
そもそも僕らは自転車なのだ。
自分で転がす車、それが自転車のはずだ。

幸いなことに、午前中は天気が持ってくれる予報だったので、準備次第進むことに。
とはいえ、ムクティナートからポカラまでは基本下り基調の道となる。それならばかなり近くまで進めるはずだ…思っていた。



現実はそう甘くはない。
初めこそ綺麗な舗装路が続いていたが、ネパールの道は交通量が多いくせに路面状況が非常に悪い。
土砂崩れが多いので、舗装までしている余裕がないのだと思うのだが、未舗装が多い上に路面状況が最悪だ。

どう進んでも石や段差を踏まなくてはならず、自転車や体に振動が来る道のことを僕たちはAFR(ア◯ルフ◯ックロード)と読んでいるのだが、このAFRがほとんどを占めているのだ。
ネパールの運転はかなり荒く、僕たちがいるのを分かっていながら対向車線から追い抜こうとしてきたり、無理な追い抜きで対向車とぶつかりそうになったりしているのをよく見かける。その度に精神が削られていく。

さらに午後から雨が降るとドロドロのヌタヌタ道となる。
そうなると車も進めなくなり、至る所で渋滞が発生する。もう地獄絵図ですよ。


このAFR地獄で完全に精神を病んでしまった僕たちは、途中のクシュマの街で休むことに。
気づいたらムクティナートから113km走っていたので、もうここで良いかと妥協。

散々な日だった…と思う反面、海外ツーリングではやっぱりこういう日がないとな、という気もする。旅とはトラブルありきだし、それが醍醐味でもある。
一個良かったところは、この日に泊まった宿のホットシャワーはこれまでの旅中で最も素晴らしいもので、今日の疲れと汚れを十分に洗い流すことができた。
その後に飲むビールも、それは素晴らしいものだった。
【ネパール山岳自転車釣り旅】⑦トロンパスの先

Thorong Hi Camp - Muktinath

昨晩は疲労に加え、頭痛と熱、体の怠さが顕著に現れ、突っ伏すように布団に入った。やはりmanangから一気に高度を上げたのが祟ったようで、かなり不安な状態で眠りについたのだが…
薬のおかげで意外にもすんなり寝ることができ、頭痛も熱も引いた。
いつもの平日よりも寝れた実感がある。
ありがとうダイアモックスとイブ。
ブランケットを念のため追加で注文したのと、ダルバートをドカ食いしたのも良かったのかもしれない。

朝3時に起き、のそのそと準備を開始する。
他のグループはまだ起きていないようで、静寂の中準備を進める。

なんだかんだで4時半にハイキャンプを出発。
あたりはまだ暗く、すこし雪が降っている。
登山道に入るとすぐに雪が現れたためチェーススパイクを付けた。

雪の量はやはり少ない。
ので押し歩きが今日も可能なのだが、岩と雪のミックスで前輪が引っかかってしまう。
その度に自転車をえいやっと持ち上げる動作が、地味にきつく、体力を奪っていく。

そのうち日が昇り、他のトレッカーも入り混じるように。
自転車を押し歩けている時は良いのだが、持ち上げる動作の時はどうしても時間がかかり、その度に急かされている気持ちになる。

思えば、なぜアンナプルナサーキットに行きたいと思ったのか。
ぶっちゃけて言うと、僕はあまりトロンパスには興味はない。
世界最高標高の峠ではあるのだが、それを超えることにはあまり意味を感じていない。
むしろ、超えなくて良いなら超えたくない。
ただし、8000m級の山々に囲まれた道を走ってはみたい。
自転車で進むたびに、奥からどんどんみたことのない景色が飛び出してくる、そんな想像を超えたサイクリングがしたくてここに来た。
トロンパスを越えようと思うのではなく、周りの景色を見渡すと、そこにはやはり美しい山々が。
僕たちはこんな凄いところを今走っているのか。そう考えると俄然力が湧いてきた。


最後の登りが終わると、地平線の先にタルチョがはためいているのが見えた。
人だかりができており、皆喜んでいるのがわかる。
ほぼ押し歩きだったが、最後だけ自転車に乗ってゴールしてみた。

Thorong pass 5416m登頂!
自転車での自己最高標高を更新できたのは嬉しいのだけど、それ以上に、自分でやると決めたことをやり遂げられてホッとしている。
つい一週間前まではただのサラリーマンだったのに、やればできるもんだ。

仕事を休んで、妻を日本に置いてきて、異国の地でもがいて…そんなことが一緒にできる仲間がいるというのは本当にありがたい。

と、感動も束の間、下山へ。
と言うのも、午後から天気が悪くなる予報があり、できるだけ早く下山したいのだ。
前情報によると、下山ルートも自転車に乗れる、と聞いていたのだけど、これはかなり難しかった。
道がガレているのと、斜度が急なのだ。
なにせ、ムクティナートからトロンパスまでは10kmで1600mもの標高差がある。

初めのほうはできるだけ自転車に乗って下ろうとしたのだが、完全に自転車が制御不能になり、何回か落車してしまった。
レインウェアは破け、ハンドルは曲がり…血は滲む。


これ以上は無理と判断し、ほぼ押し歩きに。
結局トレッカーとは同じペースになり、ポーターの人にはガンガン抜かされる。
自転車に乗れないサイクリストとは、いかに非力で情けない存在なのだろうか。


ムクティナートの街は、ヒンドゥー教とチベット仏教の聖地で、数々の寺院や像が祀られている。
巡礼の人とアンナプルナを周った人、地元の人でごっちゃになり、独特の雰囲気を纏っている。人の喧騒というのをかなり久々に感じた。
宿には早々にチェックインし、ホテルで明日のジープを予約した。なんせ明日は天気が悪い。しかし飛行機の予定もあるので、できるだけ進めておきたい。
苦渋の決断で、ジープを貸切にし自転車を中に詰められるよう、ホテルのおばちゃんにお願いした。果たしてこのジープはちゃんと来てくれるのだろうか。
夕飯はこれまでの高山生活の反動からか、たくさん料理を頼んでしまい、今日もドカ食い気絶部となる。遠くには、夕陽に染まるダウラギリが輝いていた。

