飯とカメラとアウトドア 

家にいるとソワソワする。外に出ると家が恋しくなる。何をしていても落ち着かない、社会人のブログ。

【モンゴル乗馬ツアー】 ツォクトさんちのお馬さん vol.1

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ゲルの中は気密性が高いようで通気性は良く、丁度良い塩梅の気温を保ってくれる。天井には天窓が着いており、朝日の訪れをやんわりと伝えてくれる。日本で電子音に叩き起こされる生活と比べるとかなり健康的で気分も良い。

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扉を開けると、昨日の夜見えなかった大草原が広がっていた。

 

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なんて気持ちが良いのだろう。

朝ご飯にはパン、紅茶のほかにハム、卵、フルーツ、サラダの乗ったプレートも出してもらえた。
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今日は午前中に馬と対面、午後から馬で移動となるが、ツアーの前に他のお客さんがオーダーした羊の解体ショーを見ることができた。

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解体ショーと書いているが、決して華やかなものではなく、遊牧民のスタイルで羊を絶命させ、解体していく姿を粛々と見守る。

てっきり日本の罠猟のように、首の動脈を切って血抜きをするのかと思っていたが、モンゴルスタイルでは血抜きをせず、腹に腕一本分入るだけの切り口を作り、腕をそのまま入れ、心臓の弁を引きちぎる。

 

そうする事で血が体の外に出ず、無駄にしないどころか羊にとっても1番苦しまない方法らしい。

 

絶命した後は可食部と不可食部に分けてタライに入れていく。

血は可食部になり、腸を綺麗にした後、詰めてソーセージにする。

 

毛から肉、皮まで、余す所無く利用するのは遊牧民としての無駄の無さを追求した結果か、もしくは生命への感謝の表れだろうか。

 

勿論、解体された羊肉はツアー客に振る舞われ、僕達もそのおこぼれを頂くことができた。

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馬はガイドに選んでもらい、体格と性格の合う馬をあてがってもらった。

僕は恐らくツアー客の中でも大きく重い方だったため、かなり大柄な馬が選ばれた。

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意外なことに、馬には名前がないらしい。

僕の乗った馬は非常に足元が怪しく、すぐに転げそうになる為、『足元をもっとよく見て欲しい』と思い、アシモと名付けた。

不思議なことに名前をつけた途端に転ばなくなったが、足元の草に夢中になり、道草をよく食うようになってしまった。

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操馬方法はトゥ、と言って馬の腹を脚で蹴るとアクセルの意味になる。

止まる時は手綱を引き、曲がりたい時は曲がる方向に手綱を引っ張る。

加速したい時はさらにトゥと言えば良い。

至って簡単な動作だ。

 

ちなみに、馬に乗るまで馬の扱い方は教わっていない。全て進みながら学んでいく、まさに実践あるのみのスタイル。

何も知らずに、トゥと言い過ぎると馬も自分もよく分からないうちに全速力で駆けてしまう。

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午後からはゲルを離れ、山の中に入っていく。

荷物は全てツアーの車が持ってくれるため、撮影機材だけ持てばよい。

ゲルの周りの景色でも感動していたが、更に離れると人工物が極端に減り、まるでオープンワールドの世界の中に入ったかのような感覚になる。

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たまに出てくる電柱は新しく作られたのだろうか、まだ電線が通っていない。それがまるで大きな十字架に見え、遠い昔に滅んだ文化遺産を巡っているかのよう。

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馬の背中から見える景色はこれまでとはまた違う、風と地形の流れを感じらことができるものだった。

速度と馬の背中から伝わる振動がマッチして、まるで自分が大きな動物になって歩いているような気になる。

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途中に寄った遊牧民のゲルでは、馬の乳を醗酵させて作る馬乳酒を頂いた。馬乳酒は牛の胃袋で作った袋で常温醗酵させて作る、カルピスの祖先と言われている飲み物。袋の中には発酵を促す菌が常駐しており、継ぎ足しで作り続けている。まるで老舗のラーメン屋のような方法。

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夏の間はこれだけ飲んで過ごす人もいるほど栄養価が高いらしい。

 

ちなみに、酒と名前につくだけあって、アルコールは1〜2%含まれている。微発泡で飲みやすいのでゴクゴク飲んでいると、ほろ酔い気分になってくる。

遊牧民の方達は、小さな子供から老人までごくごく飲んでいた。モンゴルの人達が酒豪というのは単に中国、ロシアの酒豪大国に挟まれているだけでは無く、小さい頃からの英才教育の賜物なのかもしれない。

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ゲルを後にし、宿泊場所に到着。

泊まるところは山合いの開けた場所で、テントはスタッフの方が建ててくれる。

 

夕食は本日捌いた羊肉でホルホグを振る舞ってくれた。

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日本で食べるラム(生後12ヶ月以内の羊肉)とは違い、非常に硬い歯応えと独特のクセがある。

聞いてみると、モンゴルではラムはあまり食べられないそう。

理由は、どうせなら長く生きて欲しいから。

人間は他の危険な動物から守り、美味しい草が生えている所を提供する代わりに、羊は毛や肉を提供する。遊牧民の思想が食事にも反映されているのだと思うと、学びが非常に多い。

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しかし肉はやはり硬い。

僕の顎が筋肉痛になるのはそう遠くなかった。

 

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この日は数日後に新月を控えており、ペルセウス座流星群のピークにも近い。ペルセウス座がどこかは全く知らないが、昨日の夜雨が降った為塵も少なく、僕史上最高の星空を見ることができた。

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マオ氏とのツーショット。

 

ちなみに、星を眺めている時、ぼくの胃袋は爆発した。

勿論、昼間にごくごくと飲んだ馬乳酒の影響かと思われる。

馬乳酒はカルピスの元祖になったとも言われる乳酸飲料であるが、それ以前に常温醗酵、常温保存しているローカルドリンクである。

胃が強くない僕はツアーグループの中でもいの一番にお腹を下し、満天の星空の元、トイレを求め草原を駆けるのだった。

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(ちなみに現地の人もよくお腹を下すらしく、これを『腸が綺麗になる』と言い、良いことと捉えているようだった)