omarama - albert town
ニュージーランド南島には南北にサザンアルプスがそびえ立ち、西からの湿った風を受け止めている。
そのため島の西側は多降雨気候となるが、反対に東側はカラッと乾燥している事が多い。
僕達が毎日川や湖で洗濯できるのはこの乾燥の恩恵を受けており、化繊素材の服で有れば問題なく乾く。
結露も今のところなく、キャンプには適した環境だなとつくづく思う。
宿泊したキャンプ場のすぐ近くには川が流れており、朝から釣りに興じていた。
そこそこ大きそうなブラウンが泳いでおり、橋桁の下ではニジマスがたくさん釣れる。
ヤブウチだけが。
僕には全くアタリすら来ない。
これは非常に良くない。
自分だけ釣れない状況というのはメンタルを削られ、焦れば焦るほどに何故かそういう時は釣れない。
決定的に釣れない何かがヤブウチと僕の間にはある。
しかし、それが何かは分からない。
結果、僕はボウズで出走することになった。
ヤブウチはいつもよりテンションが高い。
天気が良くなければ、とっくに走るのをやめて昼寝でもしたい。
途中には峠が一つあり、そこまで大きくはないが長く登ることになる。
バイクパッキングとはいえキャンプ装備を持っているとそこそこ重量があり、息が上がる。
魚が釣れたせいか、ヤブウチがいつもより早く感じる。
いや、もしかしたら僕の方がいつもより遅いのかもしれない。
lindis passの頂上。
南米の高原地帯を思わせる荒涼とした景色にため息が出る。
峠を降るとしばらく平野が広がり、TARRASという街が出てくる。
この街はWanakaとCromwellに向かう道の分岐点に存在する箸休め的な存在で、カフェやお土産屋と数軒の家で構成されている。
気温が30度を超えており、たまらず駆け込むようにしてカフェに入り、アイスを頼んだ。
ここのアイスはバニラと選んだ冷凍果物をその場で砕き混ぜ合わせてくれ、非常に美味しい。しかも僕はじゃんけんに勝ったため、タダで食べることができた。
もちろん支払いはヤブウチが行う。
元気を取り戻し、Alberttownのキャンプ場までアップダウンを繰り返しながら向かった。
僕達がAlbert townのキャンプ場に泊まるのは、単純にwanakaでホリデーパークの予約が取れなかったから。
Albert townには予約が要らないキャンプ場が二つあり、clutha river側は10ドル、もう一つの方は7ドルで泊まれる。
Clutha river側はスーパーが近くトイレに洗面台も付いているが、街の近くのため混みやすく騒がしい。
ドンチャン騒ぎをしているグループを横目にツェルトを張った。
正直、合法かつ水場が近いところに泊まれるならもうどこでもよい。
木があるとツェルトの張りやすさが圧倒的に上がるし、洗濯紐を張れるからなおよし。
clutha riverでは昼間は人が多く泳いでおり、街がすぐ近くにあるのであまり感じづらいのだが、立派な釣り場として登録されている。
僕達はSPIN(ルアー)での釣りになるので、橋とダムの間の短い区間のみ釣りが可能。
これだけ広い川で思い切りルアーを投げるのは気持ち良い。
だが、フライマンとルアーマン達がこぞって擬似餌を投げているが、アタリがある様子はなかった。
これはまた釣りの練習になるかな…と思いながら投げを繰り返していたところ、急激にひったくられるような衝撃が手に伝わり、夕闇にドラグ音が鳴り響いた。
僕のタックルは6.3ftのMLのロッドに2000番のリール。
糸はPE0.6号にフロロ1.5号で、少し強引ではあるが、トラウトなら問題なく引き上げられるはず。
しかし川の流れも相まって、伝わってくる重さはトラウトとは思えない引きだった。
夕闇も深くなる頃、5分ほどのファイトを経て上がってきたのは48cmのレインボートラウト。
ニジマスといえば親近感が湧くが、今まで見てきたニジマスの中では1番大きい個体。
勿論、達成感もひとしおで、もうほとんどない夕陽に照らされる魚体が最高にカッコ良い。
ポケビッツは仕舞寸法27センチなので、比較するとこの通り。ロッドの2倍近くの大きさがある。
釣り上げたのは夕方、といえども夜21時になるのでこの日はとりあえず捌いてマジックソルトを振り、ジップロックに入れて川底に沈めておくことにした。
明日の朝食べるのが楽しみに、テントに入る。
釣れたことが信じられなくて、ブルブル震える手を押さえながら目を閉じた。