Glentanner - Poaka
昨日釣りの感動を味わったはいいものの、夕暮れの湖に1時間以上浸かったせいで体が重く感じる朝だった。
ヤブウチとは6時起きを約束してテントに入ったが、お互いに起きたのは7時半だった。
僕は普段平日は6時に起き、7時には会社にいる生活を送っているが、果たしてこの旅行が終わった後、戻ることができるのか甚だ疑問である。
朝日は見えたが、全体としてどんよりしている。寝坊した分、いそいそと準備を進め、マウントクックへと向かう。
pukaki湖沿いのマウントクックへの道はNZの中でもハイライトになるだろうと思っていたが、朝はまだ雲がかかっており全貌を拝むことは出来なかった。
しかし、走っているうちに次第に雲の切れ目から青空が見え始め、次第に青空に混じり岩と雪の姿が見え始めた。
まるで巨大な要塞のようで、威圧感すらある。
トレッキングのスタート地点に到着する頃には完全な晴れに。マウントクックの晴天率は60%とそこまで低くないが、それでもここまではっきり見える日はそう多くないらしい。
マウントクックは別名アオラキ山。
かき氷を削ったかのような見事な外観で、遠くから見ても1発で分かる異様な形をしている。トレッキングルートはいくつかあるが、僕達は移動もあるので1番短く、なおかつ近くまで行けるfooker valleyルートで行った。
道中が綺麗だったのは言うまでもない。
トレッキングルートが山に囲われており、目当ての山じゃなくてもかなり迫力がある。
道も整備されており、鳥の囀りを聞きながら歩ける癒しのトレッキングだった。
ヤブウチとも仲が悪いわけではないが、男二人ということもありなかなか写真を二人で撮ることは少ない。
しかし、そんな一抹の気まずさを吹き飛ばすくらいには美しい景色で、ついやってしまった。
マウントクックのあとは、alps to ocean トレイルに入る。
トレイルの麓からマウントクック空港まではサイクルトレイルが敷いてあり、車を気にせず走ることができる。
ここが更に美しく、写真を何枚も撮りながら進む。
後から見返してみても、本当に綺麗だ…
こういった綺麗な景色ばかり見てしまうと、他の場所であまり感動しなくなってしまう。
旅の不感症というもので、しょうがない部分もあるが、できるだけ初心を持ち慣れないようにしたいものだ。
なんなら、行ってみて思っていたよりしょぼかった、と感じても良いと思う。
結局は自分で行動することが大事なのだから。
ちゃっかり道中で釣りもした。
もちろん、何も釣れていない。
が、ロケーションが良すぎて気にならない。
しかしここからが鬼門だった。
pukaki湖沿いは地味にアップダウンが続くルートで、かつ日陰がそこまで多くない。
水の補給地点もなければ、食べ物を買えるところもほとんどない。
僕達は今日4時間ほどトレッキングをし、釣りもして、90kmほど走らなくては行けないのだが、ここ数日スーパーが無いため食料が尽きかけていた。
景色は綺麗だが、走っているヤブウチの顔は死んでいる。
最終的には、僕が持っていたなけなしのピーナッツを二人で齧りながら、飢えを凌ぐ。
この日は寝坊したこともあり、twizelまで辿り着くことができなかった。
なんなら腹が減りすぎて、一昨日釣りをした川で釣りをしながら、パスタを茹でる羽目になった。
橋の下で準備する。落書きが良い感じにアングラ感を出してくれている。アングラーだけに。
実は今日は大晦日の為、これが2022年最後の食事になるのだが、僕が持っていたのはパスタのみ。
釣りで魚を得て、良い感じのフィッシュパスタにしようと思っていたのだが、そういう時に限って魚は釣れない。
僕は悲しく素のパスタを啜っていたのだが、それを見かねたヤブウチがマジックソルトをかけてくれた。ヤブウチは本当にできる男だ。
マジックソルトをかけると、魔法をかけたみたいに、口の中でパスタが輝き出した。
美味しい物は、普段食べれなくなってからようやく実感する物だ。
味がついているだけで、食事は本当に美味しい。
僕はこの味をしばらく忘れることができないと思う。
素晴らしい景色には慣れるべからず。
そして、美味しい物にも慣れるべからず。
それでは良いお年を。